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横浜国立大学  地盤工学と地盤環境研究分野へようこそ!

研究内容 早野 公敏 教授

研究対象: 交通地盤  カーボンリサイクル

研究業績は,研究者総覧をご覧ください。
早野教授の研究者総覧のページ (Japanese)
Details of a Researcher (English)

循環型・脱炭素社会に向けた再生土の利用

— 廃棄物から資源へ,地盤工学が切り拓くサステナブルな未来 —

 現代の建設現場では,インフラ整備や都市開発に伴い,建設汚泥や掘削泥土など大量の「発生土」が生じています.これらはしばしば埋立や仮置きによって処理されますが,その輸送や処分には多大な環境負荷が伴います.こうした背景のもと,私たちの研究室では,発生土を「再生土」として再利用することで,資源循環と環境負荷低減を両立させる技術の開発に取り組んでいます.
 再生土とは,発生土を適切に分別・処理し,再利用可能な建設材料として性能評価を行ったうえで改質した土壌資源です.私たちはこの再生土の物理的・化学的性状や力学的特性(強度・耐久性),さらには環境安全性(重金属溶出や有害物質の動態)を多角的に分析し,その成果を道路や盛土などの土工構造物への適用へとつなげています.
 この研究は,建設分野におけるCO₂排出削減や未利用資源の有効活用といった社会的課題に対する実践的なアプローチであり,循環型・脱炭素社会の実現を支える新たな地盤材料技術として期待されています.


産業廃棄物・副産物を利用した土壌改質材の開発と実用化

— 廃棄物を資源へと転換する,次世代型地盤改良技術 —

 現代社会では,鉄鋼スラグ,石炭灰,焼却灰,廃石膏など,さまざまな産業廃棄物や副産物が大量に排出されています.その多くは十分に活用されないまま埋立や処分に回されており,資源の浪費と環境負荷の増大が課題となっています.
 私たちの研究室では,これらの産業副産物を「土壌改質材」として再評価し,建設現場における地盤改良への応用をめざしています.廃棄物には,化学的安定性,固化性・結合性,吸水性など,土壌改質に有効な特性をもつものが少なくありません.これらの特性を活かした高性能かつ低環境負荷な改良材の開発に取り組んでいます.
 研究は,室内試験による材料評価に加えて,建設現場での実証実験や改良工法の開発にも広がっており,民間企業との共同研究を通じた社会実装を積極的に進めています.また,建設発生土や再生資材との組み合わせによる複合改良技術の開発も進行中で,地域の特性や資源状況に応じた持続可能な地盤改良技術の構築を視野に入れています.


土を用いた二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の開発と社会実装

— 地盤が支える脱炭素社会,地球と未来のための地盤工学 —

 地球温暖化の進行を背景に,二酸化炭素(CO₂)排出の抑制は世界的な課題となっています.中でも,CO₂を回収・再利用・貯留するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)技術は,脱炭素社会の実現に向けた重要なソリューションとして注目されています.
 私たちの研究室では,「土」という身近で膨大な地盤材料に着目し,CO₂を吸収・固定化する技術の開発に取り組んでいます.地盤工学の視点から,土壌中でのCO₂との化学反応や鉱物固定化反応を促進する方法,改質材の混合による吸収能の向上など,さまざまなアプローチにより,実用性が高く低コストなCCUS技術の確立を目指しています.
 この技術は,都市部の建設現場や農地・遊休地など多様な場所での適用が可能であり,インフラ整備と脱炭素化の両立を可能にします.さらに,産業廃棄物や副産物を改質材として活用することで,資源循環とCO₂固定化の統合的アプローチを実現します.私たちは,土を活用した地球規模の気候変動対策に挑戦し,持続可能な社会基盤の構築に貢献していきます.


交通地盤構造物を供用しながら守っていく技術の開発と実用化

—社会インフラを止めない,安全・安心を支える地盤保全技術 —

 高度経済成長期に整備された道路・鉄道・空港などの交通インフラは,今やその多くが老朽化の時期を迎えています.盛土・切土・擁壁・路盤といった「交通地盤構造物」の安定性を維持することは,私たちの暮らしや経済活動の基盤を支える極めて重要な課題です.
 私たちの研究室では,これらの構造物を供用しながら維持・補修・再生するための新たなモニタリング技術や補修工法の開発を行っています.交通を止めずに施工できること,現場条件に応じて省力化・無人化が可能であること,そして長寿命化と安全性の両立を図ることが,私たちの研究の核心です.  特に,激甚化する自然災害(豪雨・地震など)による地盤構造物への影響に対応するため,リアルタイムモニタリングや予防保全型の補修技術の導入が不可欠です.私たちは,共同研究や現場での実証試験を通じて,こうした技術の社会実装を進めています.


AIを活用した地盤材料特性の評価技術の開発

— 地盤の情報を,AIで“見える化”する —

 地盤材料である「土」は,自然の作用によって形成された不均質かつ変動性の高い材料です.その物理・力学特性は,地理的位置や深さ,土質条件によって大きく異なるため,従来の地盤調査・試験では多大な時間とコストが必要とされ,現場での即時的な判断が困難でした.
 私たちの研究室では,AI(人工知能)技術を用いた地盤評価の高度化に取り組んでいます.特に,限られた調査データから広域の地盤特性を推定する必要があるという地盤調査特有の課題に対し,機械学習やパターン認識,予測モデリングといったAI技術を活用し,空間的不確実性の低減と高精度な可視化を実現する新しいアプローチを展開しています.  また,再生資材や改良土などの新材料についても,膨大な条件下での試験結果を統合・解析する必要があり,AIによる多変量データの解析が大きな力を発揮します.
 この研究により,地盤情報の連続的な「見える化」が可能となり,より迅速かつ持続可能なインフラ整備や資源循環の実現に貢献することを目指しています.


レーダーを用いた地盤構造物の計測技術の応用と利活用

—「見えない地盤」を可視化する,非破壊・高効率なモニタリング技術 —

  地盤構造物は,外観からは健全に見えても,内部で空洞やひび割れ,劣化が進行している場合があります.こうした「見えないリスク」に対処するには,非破壊かつ高精度に内部状態を把握できる先進的なセンシング技術の活用が不可欠です.  私たちの研究室では,地中レーダー(GPR: Ground Penetrating Radar)や合成開口レーダー(SAR: Synthetic Aperture Radar)といったレーダー計測技術を地盤構造物に応用し,その診断・評価手法の高度化と社会実装を目指した研究を行っています.  レーダー技術は,電磁波を用いて対象物の内部構造を可視化する非破壊検査手法であり,インフラの老朽化が進行する現在,安全・迅速・高精度な保全を支える重要技術として期待されています.私たちは,実証実験や共同研究を通じて,実際のインフラ現場への適用を進めており,計測工学と地盤工学の融合による新たな診断技術の創出を目指しています.

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