研究業績は,研究者総覧をご覧ください。
崔准教授の研究者総覧のページ (Japanese)
Details of a Researcher (English)
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トンネルの安全な維持管理のためには、変状の早期発見と高精度なモニタリングが不可欠です。しかし、従来の目視点検や測量では精度や頻度に限界があり、予防保全の観点から十分とは言えません。本研究室では、3Dレーザースキャナーや写真測量といった三次元計測技術を用いて、迅速かつ精密なトンネル変状の検出手法を開発するとともに、各計測プロセスにおける誤差の解明とその低減に取り組んでいます。 具体的には、以下のテーマに取り組んでいます。 ・点群差分計算に伴う誤差の発生メカニズムとその解決方法に関する研究 ・環境要因が3Dレーザースキャナーの計測誤差に及ぼす影響に関する研究 ・写真測量技術によるトンネルのモニタリング手法に関する研究 本研究により、トンネル変状の早期検出と長期的な安定性評価が可能となり、補修の最適化や費用低減に貢献します。さらに、自動運転技術との連携により、アクセス困難なトンネルにおける無人点検の実現にも寄与し、インフラ維持管理の高度化・効率化に資する成果が期待されます。 |
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全国のトンネルでは、供用から長期間が経過した後に発生する盤ぶくれやひび割れなどの変状が問題となっています。特に膨潤性粘土鉱物の含有や応力解放などが素因とされますが、時間遅れを伴う変状の発生要因に関する知見は不十分です。本研究室では、堆積軟岩の生成過程に由来する構造の概念を取り入れ、膨潤性と時間遅れ変状との関係を明らかにし、安定したトンネル設計と補強対策の確立を目的とし、以下のテーマに取り組んでいます。 ・膨潤性地盤の膨潤特性の簡易試験法の開発 ・堆積構造に着目したトンネルの時間遅れ変状メカニズムに関する研究 ・水の浸透に伴うトンネルの時間遅れ変状に関する研究 ・盤ぶくれが発生したトンネルの補強方法に関する研究 ・膨潤性地山に掘削したトンネルの設計方法の提案 本研究により、膨潤性地山に掘削されたトンネルの掘削時および供用時における安定性を適切に評価できるようになり、変状が発生した場合の実効的な補強対策の提案が可能となります。また、トンネルの長寿命化と維持管理の高度化にも貢献します。 |
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土の中には光が通らないため、土中における土粒子の挙動や水の流れを直接観察することは困難です。そのため、地盤の力学挙動は応力-ひずみ関係に基づいたマクロ的な観点から議論されることが一般的です。また、土中の水の流れについても平均流速を用いた議論が多く、局所的な流動の実態は捉えきれていません。このような背景から、変形・浸透過程における土粒子の力学挙動や土中水の移動について、マイクロスケールで直接観察することには非常に高い価値があります。そこで本研究室では、さまざまな実験技術を開発し、土粒子および土中水のマイクロな挙動を可視化・観察することで、マクロ的な挙動の理解に挑んでいます。 具体的には、以下のテーマに取り組んでいます。 ・透明度技術を用いた土中水の浸透経路の解明 ・透明土技術を用いた内部侵食のメカニズムの解明 ・透明土技術を用いた河川堤防の浸透破壊メカニズムの解明 ・二次元アルミ棒積層体を用いた、地震時におけるトンネルの安定性の検討 これらの研究は、多様な地盤挙動の解明に資するだけでなく、土質力学に対するより深い理解にも貢献することが期待されます。 |
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植生工は、表層地盤の補強技術として期待されていますが、根茎の成長特性や補強メカニズムの理解が不十分であり、設計に十分反映されていません。そこで本研究室では、根系の力学的補強効果の解明を通じて、信頼性の高い植生補強技術を確立し、地盤構造物の長期安定化を目指し、以下のテーマに取組んでいます。 ・様々な地盤条件における根系の成長過程の観察 ・根系が地盤の強度に及ぼす影響 ・根系が斜面の長期安定性に及ぼす影響の解明 本研究により、植生工の設計指針の構築と、盛土構造物の長期安定性の向上に貢献し、グリーンインフラ技術としての信頼性と適用範囲の拡大にも貢献できます。 |
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トンネル工事では、地盤条件や水理条件によって掘削時の安定性が大きく左右され、崩壊や変状などのリスクが常に存在します。特に、未固結地盤や小土被り、斜面直下などの難条件下では施工が困難となることが多く、安全な掘削の実現が課題となっています。本研究室では、トンネル掘削時の安定性向上を目的として、崩壊メカニズムの解明や補助工法の有効性を検討し、安全かつ効率的な施工技術の確立を目指し、以下のテーマに取り組んでいます。 ・小土被りトンネルの掘削安定性と補助工法の効果 ・斜路掘削時におけるトンネルの崩壊メカニズム ・浸透流を伴うトンネルの掘削時安定性に関する研究 ・内部侵食がトンネルの掘削安定性に及ぼす影響 ・斜面下に掘削するトンネルの掘削安定性 ・膨張性地山におけるトンネルの掘削安定性 本研究により、トンネルの掘削時における地盤変状や崩壊リスクを的確に予測・評価でき、安全な施工に寄与します。また、難条件下での補助工法の提案や施工技術の高度化を通じて、トンネル工学の発展と持続可能な社会基盤整備に貢献します。 |
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薬液注入は、シールドトンネルのテールボイド充填や補修時の背面空洞の充填、さらには土構造物の補強に広く用いられています。空洞を完全に充填することが望まれますが、注入の挙動は地山の密度・透水性・強度、および薬液の粘性などに大きく依存し、理想的な充填は容易ではありません。そこで本研究室では、可視化実験や離散要素法(DEM)を用いた数値シミュレーションを通じて、薬液注入機構の解明と最適な注入条件の検討を行い、注入技術の高度化のために以下のテーマに取り組んでいます。 ・薬液の粘性および注入圧が薬液注入に及ぼす影響 ・周辺地山の力学特性が薬液注入に及ぼす影響 ・空洞周囲における薬液注入機構 ・ゆるみ領域における薬液注入挙動の解明 ・薬液注入を再現可能な大変形解析手法の開発 本研究により、薬液注入の挙動を正確に理解・予測することが可能となり、シールドトンネルの掘削時の安定性向上や、補修時の空洞充填精度の向上に貢献します。また、トンネル施工およびメンテナンス技術の高度化・効率化に資する基礎的知見が得られ、今後の実務への応用が期待されます。 |
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河川堤防の安定性照査においては、通常、法すべり、パイピング、ヒービングといった個別の破壊メカニズムに基づいて検討が行われます。しかし、地層構成が複雑な場合や、構造物との境界部では、これらの従来照査だけでは評価しきれず、安定と判断された堤防でも浸透破壊に至ることがあります。特に樋門・樋管周辺では、局所的な水流が浸透破壊の引き金となるケースも報告されています。そこで本研究室では、複層地盤構成や土–構造物境界に着目し、堤防の浸透安定性および地震時挙動の解明を目指し、以下のテーマに取り組んでいます。 ・高透水性地盤が堤防の浸透安全性に及ぼす影響 ・複層基礎地盤が堤防の浸透安全性に及ぼす影響 ・高透水層が存在する場合の浸透破壊対策 ・土–構造物境界におけるパイピングの発生メカニズム ・土–構造物境界における内部侵食に関する研究 本研究により、地層構成や構造物境界を考慮したより実態に即した浸透安定性評価が可能となり、既存の照査法では見落とされがちな破壊リスクの把握に貢献します。特に豪雨時の堤防決壊リスクの低減や、効果的な対策の立案につながり、河川堤防の安全性と信頼性の向上が期待されます。 |