トンネル ‐ 掘削,地震,劣化,長期安定性

地盤材料の経時劣化に起因するトンネル変状機構の解明(長期安定性)

供用から数年~数十年経過したトンネルにおいて,周辺地山の強度の低下や透水性の変化といった地山の劣化によって,覆工の剥落や盤ぶくれ等が発生する事例がしばしば報告されている。本研究では,膨張性鉱物を含む地山への水の流入による土砂化,および浸透に伴う細粒分流出による地山の強度と透水性の経時的変化(以下経時劣化)に着目し,粒度分布と 間隙比を指標に地盤材料劣化による変化を系統的にまとめる。さらに,劣化領域の強度,浸透特性,位置,寸法,および劣化の程度等がトンネル覆工の力学挙動に及ぼす影響を明確にし,地盤材料の経年劣化を考慮したトンネルの長期安定性の評価方法の構築を目指す。

欠陥を有するトンネルの耐震性能に関する研究

高度成長に矢板工法により施工されたトンネルにおいては,当時のコンクリート打設技術や施工管理方法等に起因して天端部に巻厚不足や背面空洞,ゆるみ領域が存在することが報告されている。さらに,供用から数年~数十年経過したトンネルにおいて,周辺地山の強度の低下によって,盤ぶくれ等の大変状がしばしば報告されている。これらのトンネルは地山の力学特性や荷重状況等が設計時から大きく変化し,地震時に必ずしも安全とは言えない。そこで本研究では,トンネルの裏に空洞もしくはゆるみ領域といった劣化領域が存在する場合,その劣化領域がトンネルの地震時挙動について検討する。

トンネルの地震時挙動と耐震性に関する研究

一般に,トンネルは耐震性に富む構造物とされており,その耐震性に関する研究は十分に行われていない。しかしながら,①坑口部や小土被り部分,②不良地山区間,③断層が介在する部分は地震による被害を受けやすく,兵庫県南部地震(1995)と新潟県中越地震(2004)でも甚大な被害が多数報告されている。近い将来その発生が確実視されている東海・東南海地震に備え,地層処分施設のトンネル部分の耐震性能の評価方法とその地震対策工法の提案は急務となっている。 そこで本研究では,小土被り地山と軟弱地盤を含んだ地質不良区間に掘削するトンネルを対象に,地震時における覆工と周辺地山の力学挙動について検討する。

未固結地山に小土被りトンネル掘削時の地盤の力学挙動に関する研究

東北新幹線や北陸新幹線の延伸工事区間では,未固結地山においてNATMを用いた小土被りトンネルの掘削が多数実施されたが,地盤沈下の抑制が重大な課題である。 同現場では地表面とトンネル天端および脚部が同程度沈下する「とも下がり」現象が報告されたが,その発生原因は不明確な状態である。 より効果的な地盤沈下対策を施すためには,まずとも下がり現象の発生原因を明確にする必要があり,本研究ではとも下がり現象の発生メカニズムの解明に取り組んでいる。

トンネル掘削時地山改良工法の適切な改良範囲に関する研究

東北新幹線や北陸新幹線の延伸工事区間では,未固結地山において小土被りトンネルが建設されたが,地盤沈下を防ぐため,トンネルを掘削する前に地上からトンネル周辺部分を改良してから,NATMでトンネルを掘削した。 改良範囲や改良強度は土被り,地質,地山条件,沈下許容度などにより異なり,トンネル掘削時における最適な改良範囲については未だ解明されておらず,現場では経験により試行錯誤的に様々な改良形式を適用しているのが現状である。 そこで現在,NATMで未固結地山に小土被りトンネルを掘削する際,地山改良工による地盤沈下抑制効果および効果的な改良範囲について検討し,その設計方法の提案に取り組んでいる。

トンネル掘削時脚部補強パイル工の地盤沈下抑制効果に関する研究

従来,未固結地山に小土被りトンネルを建設する際,開削工法やシールド工法が使用されてきたが,近年では支保パターンの多様化や様々な補助工法の開発により,NATMが頻繁に採用されるようになっている。 NATMによる未固結地山の掘削は,地盤沈下の抑制が重大な課題となっており,現場では様々な脚部補助工法が使用され,それらが沈下抑制効果を発揮しているという報告がなされている。 しかしながら,その抑制メカニズムについては未解明な部分が多く,現場では試行錯誤的に経験によって設計・施工されているのが現状である。 これに対し,脚部補強パイル工の沈下抑制メカニズムの解明,設計・施工にあたっての選定基準の確立に取り組んでいる。

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