以下、20078月研究室夏合宿の学生の感想(受領順)

 

@ 修士2年,白川裕之

今年は高速道路の橋梁と黒四ダムを見学した。

高速道路の橋梁見学では、日常どこにでもあるような小さい橋梁の維持管理の現状を見学した。外見から見ることができるコンクリートの劣化具合は様々だが、実際にはどれだけの耐久性があるのか想像がつかなかった。これらの想像力は必要だし、日々勉強は大事だと感じた。

黒部ダムの見学では、土木を学ぶ学生として大きな建設事業に一度は携わってみたいと感じた。しかし、終戦後に関西地方の電力不足を解消するという使命をもって多くの犠牲の上に建設されたが、現在では主に夏場の電力需要を補うために利用されているとのことだった。黒部ダムの役割は昔も今も大きいと思うが、社会の変化につれてインフラの重要度は変わってくるようだ。

昨年は建設途中のインフラ構造物を見学し、今回は既設の構造物を見学した。インフラの成り立ちには建設、維持管理、運営があるが、土木技術者はただ構造物を作って維持管理するだけではなく、それをどうすれば社会に対して有効活用できるかまで考えなければいけないと思う。

 

A 4年、佐藤貴紀

実際に見学してみると事前に読んだ本から想像していた以上に黒部ダムまでの道のりは長く険しいものであった事に非常に驚きました。また、黒部ダムはとても大きくその迫力に圧倒されました。来年からゼネコンで働きますが将来的に黒部ダムのようなビックプロジェクトに携わりたいと今回の見学を通じて改めて思いました。案内して下さった関西電力や黒部峡谷鉄道の皆様貴重な経験をさせていただきありがとうございました。

 

B 4年、萩原和樹

今回の3日間の夏合宿を通して、自分の知識の薄さを改めて実感した。一日目の、親不知の道の駅や赤田橋、いたち川橋のコンクリート構造物の見学では、実際の塩害による劣化の状況や補修した塗布の劣化などを見たが、なぜ補修部分が一部だけなのか、なぜ部分的に著しく劣化するのか、などの疑問だけが残り、その場で考えはしたものの、結局答えは見つからなかった。だが、土木構造物での塗布の不適切性は実感することができた。事前にある程度深みのある知識もって見学すればまた違った見方ができたのではないかと後悔している。またもったいなさも感じた。

二日目の黒部ダムは自分が今まで見てきたものの中で一番感動できるものとなった。あらかじめ「高熱隧道」を読んだり、プロジェクトXを鑑賞したりして予習をしていたが、実際にトロッコに乗って高熱隋道を通ったり、ダムを見学して、その大きさや迫力に圧倒された。また人間があの大きな黒四ダムを、自然と闘いながら命がけで造り上げたこと、その技術者魂ともいえる思いに対して、何か心にぐっと来るものを感じた。また水力発電の水車や、高速回転をしているシャフト、キャットウォークから見る放水の光景など、一般には開放されていない場所を見学できたことなどを含め、ここでは本当にいい体験ができた。また行く機会があれば次はぜひ日電歩道を通ってみたいと思った。ここまで思えたのは事前の予習があったからであり、あらかじめ知識をつけておくだけでこんなにも違うのだと、改めて予習の大切さを実感した。

全体を通して感じたことは、この夏合宿では遊びと勉強のメリハリがよくついていたこと、自分と先輩たちとのものの見方の違い、予習の大事さなど様々な面で、まだまだであることを実感した。だが、今までの見学会の中で一番色んな事を感じることができたものであった。来年の合宿は、今年の反省を生かして、またひとつ違った感じ方のできる合宿にしていきたいと感じた。

 

C 4年、兼子弘

非常に貴重な体験ができたと思っています。事前に予習をしてそこで感動し、今回現場を見てさらに感動しました。その両方が大事だということを実感できてよかったです。高熱隋道や黒部ダムを生で見ることができ、改めてその偉大さを感じさせられました。また、説明してくださった方々からたくさんの貴重な話を聞く ことができ、内容はもちろん、各担当の方々が伝えようとしてくださったその姿勢にも感動しました。今回の見学を通して感じた熱い思いを大事にして、今後の取り組みに繋げていきたいと思います。

 

D 修士1年、石渡大嗣
 見学に行く前に予習ということで、先生方が多くの予習用の資料を用意してくださいました。その中で、私は「高熱隋道」と「コンクリートが危ない」を読みました。実際に現場へ行ってみると、黒部ダムは自分の想像をはるかに超えていました。細田先生や林さんに何度も言われたことですが、自分の予習が明らかに足りなかったことに後悔しました。復習をするとともに今後に生かしていきたいと思います。
 黒部ダム発電所10箇所全部の発電量は原発1基分だと聞いたとき驚きましたが、黒部建設の際の犠牲の大きさや、挑戦への情熱は決して忘れてはいけないんだと感じました。それと同時に原発のリスクも、当たり前のことだが大きいんだと思いました。
 塩害の見学は黒部の見学と比べたら非常に小さいもののように見える。しかし、細田先生がおっしゃっていたように、劣化現象はすぐにコンクリートに現れるものではなく、少しずつ進行していくことや現場一つ一つが広範囲に分散していることが問題で、今後このようなメインテナンスの現場を考えて行動する技術者が必要になる。自分の勉強のモチベーションにつながり、もっと意識して考えるということを行っていこうと思いました。

E 修士
1年、姜舜紀

事前にいくつかの本と映像で予習し、技術的な面よりは、黒三、黒四工事の過酷さと、そこに携わった人達の情熱、知識、知恵を振り絞った創意工夫と不撓不屈の精神を感じ取れたと思っていたのですが、実際には自分の想像を超える光景がそこにあり、それに圧倒され、今の自分たちの生活がこのような仕事をしてきた人達 の精神を土台に成り立っていることを強く感じ、土木という仕事の意味を改めて思い知りました。

  また、宇奈月から黒部ダムまでを案内してくださった佐々木さんの経験に裏打ちされたお話は非常に興味深く、過去の経験を伝える佐々木さんの姿から黒部の精神のようなものを強く感じました。また、佐々木さんのお話は今まで自分が経験してきた見学会での案内とは雰囲気が違っていて面白く、一層惹きつけられました。

 

F 修士1年、五十嵐悠

黒部はやはり巨大ですさまじいものだった。さらに、あの地にあれだけの巨大な構造物を作ろうと考えた人、そして、実際に作り上げた人たち、その人たちの意志の大きさもすさまじいと感じた。

発電所にあった太田垣氏のコメントにもすごく衝撃を受けた。成功率が70%というと、普通の人なら失敗を考え逃げたくなる人もいるだろう。そういう仕事にこそ自信を持って行うということは、やはり弱い心ではできないと思う。やはり、メンタルの強さというのは何に置いても重要だと感じた。

 

G 4年、西尾優佑

まず今回行ったこのような素晴らしい合宿に関係した方々、特に旅館の方、ドライバーさん、そして関西電力さんに感謝したいと思います。

 特に、やはりこの合宿のメインである黒部ダムでは、とても貴重な体験が出来ました。勉強もして、画像も見て、覚悟してきたにもかかわらず、そのスケールの大きさ、壮大さに圧倒されてしまい、「すげー!!」という言葉しか出ませんでした。

また、キャットウォークに出た時は言葉では表せないほどの感動をしました。もっとあの場所で″黒部ダム″を感じていたかったです。また、そこで写真をとったのですが、あの感動が写真では友達にうまく伝えられないのが残念です。

 正直、これ程いい経験をするとは思っていませんでした。こんな心に響くような、人を感動させるような仕事がしたいです。

 

H 修士1年、アンテサナ・カルロス

計画・設計・建設時に参加した技術者・親方・労働者・設備屋等のそれぞれの立場で抱える問題を“努力”で乗り越え、出来上がった黒部ダムを見学できたことを感謝しています。 

プレッシャの高い現場と生々しい部分も途上国で経験したけれど、困難な黒部ダムは想像以上に違いない。人間の限界を上回ったプレッシャ・危険度の高い作業を命がけで勇気で出来上がった黒部ダムは将来、実務の障害を乗り越える“力”になるに違いない。

設計者、管理者や監督として活動を行う際に、現場の内容や規模はどうであれ、人の手で作り上げるもから、存在する勇敢な労働を大事に見守ることを忘れずに安全の強化をしたいと思います。

外国人留学生として強大なプロジェクト“黒部ダム”を体験出来て一生、残るに違いない。

 

I 4年、大西順

今回の夏合宿で、多くのことを学んだ。

 黒部ダムにおいては予習をしておいて良かったと何度も思った。予習したことにより、行った場所ごとにどのような背景があるのかを思いながら技術者の方の話を聴くことができた。その予習によって見学会をさらに面白いものにすることができた。ありきたりな表現のしかたになってしまうが黒部ダムは、すべてのプロジェクトを通して「壮大」であると感じた。

 また、この夏合宿ではうまく話すことの大切さを改めて実感した。案内してくれた方々は話すのが上手でわかりやすく、とても話を聴く意識を高めてくれた。また、それだけではなく前期の反省、後期の目標などをみんなの前で話している先輩方の話のうまさにも圧倒され、自分の話術の低さに悔しさをも感じた。知識を多く持たなければいけないのも当たり前のことだが、それと同等に、またそれ以上に、上手に話をすることが大事であると思った。

 

J 修士2年、児玉章裕

◎一日目

高速道路:メンテナンスの大変さというものがよくわかった。また、説明を受けなければその構造物にどのようなことが起きているのかがわからず、今までのように机の上での勉強だけではすぐに現場で技術者として活躍できないということを痛感した。

◎二日目

黒部ダム:黒部全体に、ただただ圧倒された。筆舌に尽くしがたいほどの感動だった。可能であれば一つ一つの施設をもっとゆっくり見たかった。

事前に勉強して行ったが、まさに秘境の地でのプロジェクトだったのだなということが、ダムに着くまでの行程が長く、またその道が険しかった事で再認識できた。

マルパッセダムの事故を教訓にして設計が変更されたというのが非常に印象的だった。マルパッセの事故がなければもしかすると黒部でも同じような事故となっていたかもしれないと考えると、未知のプロジェクトに挑むことの困難さを改めて痛感した。

もう一度黒部に行き、今度はゆっくりと味わってこようと思う。

◎三日目

松本城にもぶどう狩りにも行けて大満足でした。

◎全体を通して

今回の合宿は自分にとって非常に有意義なものでした。今後の自分の血肉になるという点では、今まで数多く行った現場の中で一番だったと思います。このような合宿を企画していただいた先生方、幹事の小野さん、案内をしていただいたNEXCO中日本、関西電力の担当者の方、3日間運転してくださったドライバーの中野さん、他今回の合宿に関わった全ての方に感謝いたします。

 

K 修士2年、我彦聡志

初日:メンテナンスには建設のような華やかさはない。けれど、メンテナンスの対象物のこと・周辺環境などを熟知した上で行われる仕事であり、エンジニアとしてのノウハウが問われる、シビアな仕事だと感じた。

二日目:今年は、見学場所の歴史、人々の思いなどを学んでからの見学だったが、この形式はぜひ来年も続けていくべきだと思う。バックグランドを知った上でプロの説明を聞くのと、知らずに聞くのとでは、吸収する質も量も大きく違う、と感じた。

全体を通して:黒部ダム建設に携わったエンジニアたちの想いや苦労を知り、ダムや周りの自然のスケールに圧倒され、メンテナンスの難しさや必要性を肌で感じることができた。そして、改めて、現場でモノを実際に見て、感じ、知り、得られたノウハウを総合的にマネジメントすることができる、ゼネコンで働くことに対する意志が強くなった。単に“一般人が入れないところに入ることができた”ということだけでなく、自分の将来に対する意識、意欲も刺激を受けた、という意味で、3年間で最も内容の濃い合宿だった。

 

L 修士1年、玉置久也

1日目 メンテナンスの現場ということで、もっと大規模な橋を想像していたが普通のありきたりな橋で意外だった。がっかりした気持ちは全くなく、むしろこのような小さな橋でもしっかりメンテナンスされていることに感心した。また、2つ目の橋については、メンテナンスミスということで、実際に技術者でもミスがあるという事実を知り、その失敗例を目の当たりにして、適切なメンテナンスの重要さ、難しさを感じた。

2日目 トロッコに乗り、高熱隧道を進んでいく中で、あんなに立地の悪い場所にあれだけのものを建設した人たちの偉大さを感じた。また、高熱隧道は今でも本当に熱く驚いた。そして、説明してくださった関西電力の人のあの笑顔の裏にあった熱さが印象に残った。本当に誇らしげだった。また、黒部ダムのキャットウォークは、一生に一度であろう体験ができ本当に感動した。夜の宴会は、地盤研のときは大部屋でみんなが集まりワイワイ騒ぐというものだったが、コンクリ研はそういうのがなく、各自個室でといった感じで少し寂しい感じがした。親交を深めるためにも飲み会はみんなでやった方が良いのでは??

3日目 ぶどう狩り初体験だった。おいしかった。松本城も良かった。時間配分がちょうど良かったと思う。

 合宿を通じて、本当に貴重な体験ができ勉強になったと思う。反省点としては、幹事はM1だったにも関わらず、小野さんだけに任せっきりでほとんど仕事をしなかったのが本当に申し訳なかった。受身だったのでもっとこちらから仕事をもらいにいけばよかった。

 

M 4年,小松怜史

私にとって研究室合宿は初めての経験で、見るものすべてが新しく刺激的であった。それと同時に、自分の知識の未熟さ、勉強不足を痛感させられるものでもあった。

一日目の橋梁見学。うわべだけの知識はあっても、それを実構造物でみて考えるということができない自分を改めて思い知らされた。また質問をしようにも、どう質問してよいものかが分からない自分がいた。ただ、一つ思ったのは、先生がおっしゃるように構造物の修繕補修というのは原因を探求し、適切に考え対処することは難しいようであるが、魅力のある分野なのだということを私の中で初めてしることができたのは意味があると思う。

二日目の黒部ダム、発電所見学。私は何度か宇奈月を訪れトロッコにのりその景観を楽しんだことはあった。ただその当時は観光として素晴らしい景色をみて、ダムを造った人の苦労を聞いて、すごかったんだなあとどこか人事のようなところがあったように思う。ただ、今回いろいろな箇所の現場を専門家の方に真剣に案内していただいて、我々土木屋のしている仕事の大切さ、偉大さを感じ取ることができた。それと同時に他人事ではなく、自分もそんな喜びや達成感を味わってみたいという衝動にかられた。

先生をはじめ、諸先輩方も今回の合宿は実り多きものでかなりレベルの高いものだとおっしゃっていた。たしかに私にとっても価値あるものになったが、私はこの合宿しか知らないわけなのだから、もっと意味のある、もっと楽しい、もっと充実した合宿を来年度以降もしていきたいし、できると思っている。

 

N 修士1年,小野敦子

1日目の塩害・ASRの構造物見学は,神奈川ではなかなか見られないものでとても貴重な機会でした。補修時期の違う2つの橋梁を比較することにより,塗膜で表面だけをフォローしても補修の効果は数年しか持たないことがわかりました。こちらの見学も,黒部のように事前に予習していけば,より詳しく学べたのではないかと思います。

  黒部峡谷を見学した2日目は快晴で景色がとても綺麗でしたが,トロッコ列車に乗ってしばらくは,谷底からのあまりの高さに恐怖を感じ,景色どころではありませんでした。黒部峡谷の険しさと,重い資材を背負って日電歩道を渡ったボッカと呼ばれる方々の勇敢さ感じました。高熱随道では岩盤からくる熱さを体感しましたが,建設当時,175度に達する岩盤温度と戦いながら地道に掘削を続けた作業員の方々がここにいたのだと思うと,畏敬の念を抱かずにはいられませんでした。また,黒部ダムはとてつもなく大きいもので,展望台から見下ろすと人間がアリの様に見えてすごく非力な存在に感じました。しかし,大勢の人々が集まってとにかく完成させることを考え,破砕帯や泡雪崩などの逆境に遭いながらも試行錯誤を繰り返して発電所やダムを完成させたことを考えると,信念や情熱,命さえ懸けた人間の偉大さをあらためて感じました。黒部ダムは本物の土木技術者・土木作業員の方々の傑作であり,建設関係者全員の魂の象徴であるように思います。この見学では,土木事業のスケールの大きさを再認識すると同時に,土木技術者のあるべき姿を学びました。このような素晴らしい土木構造物を見ることができて本当によかったと思います。

  私はこの合宿で幹事を任せていただき,実りのある楽しい合宿を目指して企画することの面白さを経験しました。準備では林さんに頼ってしまうことが多く,至らない点も多々あったと思いますが,反省点は来年の夏合宿と私の今後の生活に役立てようと思います。貴重な現場見学の準備をしていただき,合宿中の皆の安全を見守っていただいた先生方に感謝いたします。

 

 

O 修士2年,譲尾美里

○事前に予習したこと

・課題図書「高熱隧道」

・「黒部の太陽」

・プロジェクトX「シリーズ黒四ダム @秘境へのトンネル 地底の戦士たち」

・プロジェクトX「シリーズ黒四ダム A絶壁に立つ巨大ダム 1千万人の激闘」

・「コンクリートクライシス」

 

(各見学地の要所要所において思うこと・感じたことはたくさんありますが、焦点を絞って感想を以下に記します。)

 

○宇奈月〜欅平、阿曽原谷〜仙人谷

宇奈月〜欅平までのトロッコ列車での、関電の佐々木さんは技術者のボスのような風格を漂わせ、貫禄のある人であった。どっしり構えたオーラと話し方や目つき、風貌は、他の関電の方たちとは違っていた。険しい黒部峡谷を、縫うように進む列車。渓谷を背後に熱弁して下さる姿に、途中何度も圧倒され、萎縮感さえ覚えた。

バッテリーカーの車内で、関電の担当者と一番身近にお話ができた。もっともっと深く知ってもらいたいという、担当者の熱意が終始込められていて、その思いをとても近くに感じることができた。高熱隧道にさしかかる手前の仏像が祀られている地点で、技術者が降りるか何かで、ちょうど停車した。そこに皆で手を合わせ、車内全員が静まり返った。阿曽原谷〜仙人谷をバッテリーカーで通る瞬間は、胸が締め付けられる思い。箱のガラス窓から見える、現在もほぼ掘ったときのままの状態であるという岩盤を、瞬きするのも惜しいくらいにずっと眺め続け、胸に焼き付けた。睨みつけるように岩盤を見つめている途中、涙が出た。建設当時は約160℃あった隧道は、今や約40℃。それでも、扉を開けるとムシっとした空気が流れ込み、岩盤近くにまで手を翳すと熱さが伝わってきた。当時は160℃?その中で掘削? 本を読んだとはいえ、この隧道をいざ目の前にして何か言葉を発しても、すべてがちっぽけで稚拙なものになってしまうくらいで、黙って見つめるのがやっと。苦しかった。バッテリーカーで通ってしまえばあっという間だけど、私にとってはとてつもなく長い数分間だった。

 

○歴史を知る・思いを知る

今まで、見学会でも個人的な旅行でも、今回のように事前に書物を読み、勉強をして臨んだことはほとんどなかった。ガイドブックやインターネットでの、簡単に手に入る知識を持って、あとは実物を目の前にしたその場の自分の思い任せ。開発の歴史を知ること、その開発に携わった技術者たちの思いを知ること。それらを知らずして、上物だけの煌びやかな構造物で単に感動したり評価したりすることは、とても浅はかで何も分かっちゃいない、と感じ自分自身が恥ずかしくなった。事前の予習をしておくことで、実物を目の前にしたときの感動や考えが、2倍も3倍も違ってくることを身をもって体験できた。

 

○今回の貸切バス体制について

30万円以上の研究費を当てて下さった貸し切りバスでの移動。運転手の中野さんのその道のプロの臨機応変な判断で、特に3日目のレクでは効率良く観光できた。学生がレンタカーを運転して移動するよりも、車内で合宿係の連絡事項や先生のお話が皆で揃って聞ける。今後も、合宿は勉強という位置付けを前提とし、ぜひともバス移動であることを願う。贅沢な話ですが。

 

○最後に

一般では入れない場所に入らせてもらい見学ができ、一生に一度の体験であろう。学生生活最後の研究室旅行で、心底最高の合宿であった。事前の勉強と、実物を目の前にしたときの感激がリンクしたが、感動と驚きと萎縮と苦しさと……湧き上がる様々な複雑な思いをまだ整理しきれていない。撮りまくった写真の他、林さんのまとめて下さった資料でまだ目を通していないものも十分に活用し、もう一度振り返って復習をしたいと思う。そして一人でも多くに、黒部開発の歴史から今の姿までを語って聞かせたい気持ちで一杯だ。まず一番身近な家族に、この体験を余すことなく聞かせようと思う。このような貴重な体験を与えて下さり、本当にありがとうございました。