細田の感想

 

@ 実物を見ることの大切さ。これは当たり前のことではあるけど,今回も痛感しました。実際にバスに乗って3つのメインテナンスの現場を見たけど,現場と現場は離れている。それぞれの症状も違う。手当てした当初はきれいに仕上がっても,すぐ再劣化したり,ひどい場合は補修に使った材料自体が劣化したりしている。このような実物を見て,「メインテナンスの本質とは何か?」「メインテナンスの面白さとは何か?」を私は語ることができます。一流のメインテナンス技術者に教育を受けてきたからです。そのような教育を受けられる学生は幸せだと思ってください。
 黒部ダムの見学での実物を見ることの感激は私も忘れられません。宇奈月の慰霊碑,欅平の200mのエレベータ,エレベータを登ったところで見た泡雪崩で宿舎や作業員たちが叩き付けられた岩盤,高熱隧道の熱気と硫黄臭・湯の花,発電所の施設そのものとタービン,インクラインの施設とその中で見た中島みゆきの紅白歌合戦のVTR,ダムの放水を間近で見たキャットウォーク,ダム本体,ダムコンクリートの運搬に使ったコンクリートバケット,バケットを運搬するクレーンの設置基礎,関電トンネルの破砕帯。11つの場所で多くのことを感じました。一言で言うと,昭和の時代のすごさを感じた,ということです。
 これも,もちろん予習をたくさんしたことは非常に効果は大きかったですが,学生と一緒に実物を見ることでしか,感じられない感動だと思います。

A 私はやはり人が好きであること。今回は,「もの」を見に来たわけですが,やはり私は人が好きなのだと思います。黒部の建設に関わったいろんな方のことを,事前の予習で学びました。もちろん見学している間はそれらの方々の生き様が頭に思い浮かびました。それもさることながら,今回の見学のガイドをしてくださった,関西電力記念館の佐々木さんには本当に感謝です。おそらく関西電力のOBだと思いますが,黒部の建設,黒部の峡谷のことを知り尽くしている方で,我々の見学姿勢に非常に好感を持ってくださり,すごく面白い話も交えた名ガイドだったと思います。佐々木さんを通して,黒部の建設に賭けた技術者たちの魂を感じることができました。やはり,人間というのは,お互いの気持ちが響きあったときに,いろんなことを感じあい,相手に伝えたいと思うのだと思います。たまたま会った細田に,佐々木さんは本気で魂を伝えようとした。それが嬉しいのです。関西電力の太田さんにも限られた時間の中,丁寧にガイドをしていただき,大変勉強になりました。また,バスの運転手の中野さんともとても打ち解けて,本当に楽しい合宿になりました。こうやって,みんなのプラスのエネルギーと笑顔で,みんなの人生を豊かなものにしていく,というのが,私が最も求めていることなのだと思います。

B 教育の大切さ。学生も,しっかりとした教育や予習によって物の見方が全然変わることを感じ始めていると思います。今回の夏合宿ではそれがよく伝わったでしょう。やはり教育は大事なのです。物の考え方,見方が変わるということがどれだけ人生にとって大きなことか,それを伝え,実際に考え方を私の思う良い方向へ引っ張ってあげるのが,私の仕事です。私のプラスの言葉は学生の肥やしになると思いますが,逆に,マイナスの言葉はすごく傷つけるだろうから,その配慮が必要だと認識しておきます。鍛えるための厳しい言葉は構わないと思いますが,不用意にぽろっと出る中傷は避けなければなりません。先生の言葉が非常に重く,影響力のあることは,自分が学生のときも感じてきました。今は自分はもうしっかり先生なので,気をつけないといけませんね。
 夏合宿の2日目の夜の宴会では,学生のスピーチに心を打たれたのが何回もありました。姜君のスピーチには涙が止まりませんでした。夏合宿の段階でこのような雰囲気になったことは過去にはありません。今年は後半戦,どのような雰囲気になるのか楽しみになってきました。