横浜国立大学大学院
都市イノベーション研究院


教授 早野 公敏

  

ご挨拶
 世界の国々が日本の動向を見守っている!と感じることがあります.原発事故で日本のエネルギー政策はどのように対応していくのか?,あるいは超高齢化社会に対して日本の方策はどのように進んでいくのか? これらは日本だけではなく,いずれ世界の国々も直面する課題です.日本は先駆けて取り組んでいて,解決のモデルケースになりうるのかどうか注目されています.
 東日本大震災を受けて,私がいる地盤工学の分野でも,”ねばり強い構造物”の必要性が言われています.これも先駆けた試みでしょう.世界のモデルケースになるように,少しでも貢献できるように頑張っていきたいと思います.
 とはいうものの私一人でできることはたかが知れています.下記のHPをご覧いただき,もし少しでも興味を持たれましたら,一緒に研究を進めていただける大学院生(博士課程前期・後期)を募集中ですのでぜひ見学にいらしてください.問い合わせ先はこのページの下のほうにあります.

研究テーマの概要
最近の関心テーマ
 ・粘り強い土構造物のデザイン
   津波洗掘に粘る防波堤のデザイン,巨大地震時慣性力に粘る鉄道軌道のデザインなど.
 ・異分野の先端技術を導入した調査・設計手法
   Computer Visionを応用した調査手法,Smooth Hydrodynamicsを応用した設計手法など.
 ・発展途上国の土構造物マネジメント
   気候・気象を考慮した舗装材料・構造の理論的導入など
■地震に強い地盤のデザイン
 我が国は地震が多発する国です.地震により道路や港,空港が被災し,使用できなくなると人の流れだけでなく,物流もストップしてしまいます.物流システムが長期間機能しないと,私たちの生活に支障が出てきますし,製品の輸出入を円滑に行うことができなくなり,我が国の国際競争力の低下にもつながります.
 そこで「地震に強い地盤のデザインに関する研究」に取り組んでいます.たとえば,港を建設するときに地盤をどのように強化すればどれだけ地震に強くなるか,さらにはもう完成している港の場合,日常活動になるべく支障がないように,いかに周辺の地盤を改良するか,について研究を進めています.とても難しい課題ですが,メカニズムを意識しながら,地盤の複雑な挙動を予測することにチャレンジしています.

                    
      道路の地震被害(台湾)    地盤改良で液状化を防ぐ(模型実験)


■持続的発展を支える地盤材料の有効利用
 航路水深や泊地の確保のために浚渫が行われます.浚渫された土砂は一般に水をたっぷりと含んだ粘性土やシルトの場合が多く,そのままでは材料として利用できる用途が限られています.そのため,浚渫土の多くは埋立地に処分されてきました.しかし,浚渫土の発生量は非常に多いので,処分地の確保が難しくなってきています.
 そこで,「浚渫土砂の有効利用技術の向上に関する研究」に取り組んでいます.例えば,浚渫土砂にセメントとポリマーを添加・攪拌して,材料として利用しやすいように,“つぶつぶ”に改良しています.“つぶつぶ”に改良した土を,道路や宅地盛土の材料,さらには人工海浜の材料として利用できないかといろいろと試みています.

                 
          水を多く含んだ浚渫土砂      “つぶつぶ”に改良した浚渫土砂     

参考文献
1. Dong, P. H., Hayano, K., Kikuchi, Y., Takahashi, H., Morikawa, Y.
Deformation and Crushing of Particles of Cement Treat Granulate Soil, Soils and FoundationsVol. 51, No. 4, pp.611-624, 2011.
(上記論文などを含めた成果により,Phan Huy Dong博士(2011年9月横浜国立大学大学院博士後期課程修了)が2011年度地盤工学会技術奨励賞を受賞しました.)

事故・トラブルを防ぐ土構造物のメンテナンス
 一般に構造物は,作用する荷重や環境によって経年とともに性能が低下してきます.土構造物についても,近年,経年年数に伴う老朽化により,維持管理に要する費用が増大しています.予算や人の制約により,構造物の損傷が致命的になると,更新のために長期の閉鎖が余儀なくされて,人や物の移動に支障が生じてしまいます.
 そこで「事故・トラブルを防ぐ土構造物のメンテナンスに関する研究」に取り組んでいます.たとえば,舗装のなかに生じている剥離箇所を簡単にかつ早く検出できる調査方法,温度を下げる遮熱性舗装による延命化,などのように少ない予算で効率的に維持補修が可能となる技術をいろいろと試みています.

                 
    赤外線カメラによる剥離箇所の検出   遮熱性舗装による温度低減

参考文献
1. 早野公敏, 水上純一, 鈴木哲雄,層間剥離したアスファルト舗装の表面温度分布特性に関する実験的検討,地盤工学ジャーナル,Vol.2, No.1, pp. 1-10 2007.
2. 早野公敏,前川亮太,鈴木哲雄,橋爪秀夫, 連続式赤外線撮影による空港アスファルト舗装の層間剥離探査の試み 地盤工学ジャーナル,Vol.3, No.1, pp. 13-232008.
(上記論文などの成果により,早野が2011年度地盤工学会技術開発賞を受賞しました(水上氏らと共同受賞)).

発展途上国の土構造物のマネジメント
 道路は,経済成長のために必要な基盤施設です.しかしながら,発展途上国では十分に整備されていない場合が多いです.またせっかく整備しても,経済的理由,技術的理由,人材不足等の理由で,十分な保全がなされている状況とは言えません.
 そこで,「発展途上国の土構造物のマネジメントに関する研究」に取り組んでいます.例えばバングラデシュでは,国土の大部分がベンガル湾沿いに形成されたデルタ地帯のため,洪水による道路の被害がさまざまな形で起こります.洪水により浸水した道路が,どれくらいもろくなってしまうか,どのようにすれば2次的損傷が防げるか,について,バングラデシュの地質,地形条件や社会的条件などを考慮して,効果的な方策をいろいろと模索しています.

                   
      バングラデシュ国道の損傷      バングラデシュ農村道の損傷
参考文献
1. Islam Mohammed Russedul and Hayano, K., “Some Insight into Maintenance Management of the Paved Road Networks in Bangladesh”, Proceedings of the 11th International Symposium on Advanced Technologies in Asphalt Pavements (Kwang W. Kim eds), Korea, June, pp. 133-140, 2010
2. Islam Mohammed Russedul and Hayano, K.,"A Study of Failure Mechanism of Roads in Bangladesh", Proceedings of the 12th JSCE International Summer Symposium, pp. 307-310, Tokyo, Japan, 2010.
(上記の論文発表に対し,Islam Mohammed Russedul 氏(2011年横浜国立大学大学院博士課程(前期)修了,博士課程(後期)在学中)がBest Paper Presentationを受賞しました)

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専門分野
地盤材料,土質改良,地盤強化,土構造保全
担当講義科目 
・学部
 地盤の力学,土質力学演習,土木工学実験・演習T(土質実験),都市基盤演習,土木工学演習

・大学院
 地盤設計学,地盤設計学特論
学歴
1994 東京大学工学部土木工学科卒業
1996 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1997 東京大学大学院工学系研究科博士課程中退
職歴  *リンク先で,現在の専門分野につながる素養を教えていただきました.
1997 東京大学生産技術研究所第5部古関研究室 助手(採用)
2001 東京大学生産技術研究所人間・社会大部門古関研究室 助手(組織替)
2001 (独)港湾空港技術研究所地盤・構造部地盤改良研究室 研究官(転任)
2003 (独)港湾空港技術研究所地盤・構造部 主任研究官(昇任)
2005 (独)港湾空港技術研究所空港研究センター 特任研究官(併任)
2007 横浜国立大学大学院工学研究院システムの創生部門 准教授(採用)
2009年 首都大学東京都市環境学部 非常勤講師(〜2010年3月まで)
2011年 横浜国立大学大学院都市イノベーション研究 准教授 (現在に至る)
2011年 放送大学非常勤講師(〜2012年3月まで)
主な所属学会
 地盤工学会土木学会
受賞歴
1998 土木学会53回年次学術講演会優秀講演者
2005 平成16年度地盤工学会研究奨励賞
2012年 平成23年度地盤工学会技術開発賞
研究業績・学外委員会
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